風景を作る人柳生博 (タツミムック―ガーデニングシリーズ)
枕木の庭 |
実は八ヶ岳を本拠地に「庭師」の顔を持つ俳優、柳生博の様々な作品(庭)を紹介した本です。枕木というのは半自然素材ながら無骨過ぎるせいなのか、大きすぎるせいなのか、意外にも自然の風景には馴染み難い。かえって風景そのものを殺してしまいがちの素材であるともいえます。ところが柳生博の手掛けた枕木の庭は不思議なくらいにしっとりと風景に馴染んでいます。力強く、美しい。彼のそんな庭が大判の写真で見事にとらえられているので、ページを見開くたびに、都会に生活する人たちにとっては大きな憧れの本に、田舎に住む者には大いなる指標の本となるに違いないと思います。彼の八ヶ岳倶楽部も勿論紹介されています。
風景を作る人 柳生博 |
俳優である柳生博さんが、庭師としての思想と作品を紹介したムック誌。といっても、素人の趣味の域は大きく超えています。そこにはプロの庭師を凌駕する、思想があるのです。
個人的には、自然は自然のままが一番良いと思ってきました。柳生さんも、極相林(原生林)の素晴らしさは十分知っています。その上で、そこには住めないと言います。大事に保護して、住むべきでは無いのかも知れません。
この本を読んで、柳生さんの自然(雑木林)へのかかわり方と、その結果を見せられると、おのずと意見が変わってきます。柳生さんの作り上げる風景は、当初むしろ殺風景ですら有ります。しかし、年月が自然の力を組み込んで、人と自然が共にある素晴らしい風景に作り上げてゆきます。柳生さんには、その年月による変化も見えてしまうようです。里山的自然ともまた少し違う、人と自然との美しい関わりのある、庭を造りたい志す人は、是非見ておきたい一冊です。