男のガーデニング入門 (角川oneテーマ21)
「育む」趣味から「愛(め)でる」道楽へ |
古来日本では、庭弄りと言えば男の趣味と決まつてゐました。盆栽という、世界屈指の(本当に凄いと思います)植物鑑賞技術は、おっさんの道楽だったのです。
現在では植物鑑賞は「ガーデニング」に姿を替え、特にイングリッシュガーデンの流れを汲む価値観の中では緑を「自然に」「豊かに」「育む」ことが重視されてゐる様に思ひます。ガーデニングの本質は緑を「育てる」事ではなく「観る」事に在る、と著者は言ひます。「本当に楽しんでますか?」この一言だけでも本書は価値が有ると言へます。幸せで豊かな家庭の「良き趣味」から、道楽という本来の姿へ。「なかなか上手く育てられなくて」とお嘆きの御婦人方にお勧めしたい。
男子諸兄にも勿論お勧めする。幸いにも日本に於いては、何処に行っても緑は必ずある。それを愛でる気持ちを以って接すれば、其れは既にガーデニングと云へるので在ります。ま、その心境に至つては名前なぞ何でも良いのではありますが。
「入門書」と言うより、エッセイ・手記として読みたい本 |
この本は文字通りの「ガーデニング入門」、植物や園芸についてのうんちく」、八ヶ岳倶楽部に置ける仕事や園芸に関するエッセイの3部分から成り立っているが、全体を通して感じられるのは、著者の生き物に対する親しみや好奇心、それが高じて園芸への道を選び、八ヶ岳で華族や友人、社員たちと一緒に、非常に幸せな、充実した日々を送っているというメッセージである。
父の博氏は、高名な俳優で、NHKのクイズ番組や、自然紀行番組のナレーターなどでもお馴染みで、役者になるために生まれてきたような人であるが、著者の眞吾氏は、「趣味の園芸」を見ていると、何となく頼りなさそうで、人からすかれそうで、そのために他の出演者が本領を発揮しているような感じの青年である。
「うんちく」については植物好きの人なら知っていることが多いし、たとえばツバキ科のもっこくのように、赤くていかにもおいしそうな実がなるのに、鳥のお腹では消化できず、鳥はただ働きで、タネをうんちと一緒に遠いところにまいてやるというものもある。
これからガーデニングをやってみたい人には、著者の個性や情熱がよく伝わってくる、一読の価値がある本田と思う。
ひとことだけ |
自然の中に生き楽しんで暮らすのは、すばらしい。ひとことだけおもしろいと思ったことを紹介します。「リスは越冬にあたり、ドングリを次々と土の中に隠す。リスに忘れられたところの実が芽を出す。」結果的にリスがドングリを植えている。自然の不思議さがわかるエピソードと思いました。